マサホ議員
 「京都左京ライフ」のインタビューに時間を取っていただいてありがとうございます。可奈子さんと初めてお会いしたのは吉田神社の節分祭の時ですね。
「追儺の矢」のところにぼくは座っていますが、いつも「お化け」を連れて来て盛り上げていただいてありがとうございます。
あれは一体なんなのかをお話ししてもらえますか。


鈴鹿さん
 花街の方々がいろいろな格好に扮装される「お化け」ですが、古くは花街以外でも節分の夜に行われていた風習です。女性が男性の格好をしたり男性が女性の格好をしたり、違う年齢の装いをしたりして、自らにかかる厄を除けるという意味がありました。「お化け」をされている芸妓さんたちは、吉田神社には厄除けにいらっしゃるので、父や私がお詣りの場所までお連れしていますね。

マサホ議員 来年の2月の節分も待ってますよ。僕も吉田で生まれ育っているので、節分といえば夜店もたくさん出るし子どもの頃から大きな楽しみでした。
可奈子さんのお父さん、鈴鹿且久さまには吉田の氏子講社長もしていただいて、日頃からお世話になっています。
ところで、可奈子さんはノートルダム小学校、同志社中学・高校から京都大学に進学され、アメリカにも留学されましたね。聖護院で生まれ育って、小さい時の地元の思い出は何かありますか。

鈴鹿さん 地元の小学校には通っていませんでしたが、ひとりっ子ということもあり近所の子供さんたちと遊んだり、お地蔵盆のときに大人の方々にお菓子をいただいたり輪投げをしたり、といった記憶があります。

マサホ議員 大学に進学されて、アメリカに留学されましたね。留学で印象に残っていることは何ですか。

鈴鹿さん 留学中にはいろいろな国の方々と交流しましたが、みなさま自国のことを大変誇りに思っていらっしゃるのが印象的でした。よく皆で政治的な話も含め熱心に話す機会が多く、日本ではあまり ない雰囲気だと感じると同時に、日本のことに今まで興味をそこまで深く持っていなかったのではと気づきました。
それは土地でも同じで、海外に行くとその場所のことを調べるのに、住んでいる地元はきちんと調べたことがなかったので、京都に帰ってきてから、地元のことをもっと深く知りたいと、歩き回るようになりました。

マサホ議員 聖護院八ッ橋総本店のお店は三百年を超える歴史と伝統がありますね。
八ッ橋についてお話しいただけますか。

鈴鹿さん 八ッ橋は今年で326年になる歴史があります。私にとっても八ッ橋は子供の頃から一番身近にあったお菓子です。小学校の頃は父の朝礼について行って工場のお菓子をつまんだり、学校帰りにお店の試食をいただいたり。母に聞くと、原材料はお米で油も使っていないので、離乳食も生八ッ橋だったとか。私にとって八ッ橋は、生活の一部でした。
ただ一般的には、お土産のお菓子として知られていると思います。歴史あるお土産、と言っていただくのは有難いことですが、普段日常で食べるお菓子で無いと思われるのは、残念です。
召し上がっていただければ美味しいことはわかるので、私のようにみなさま、生活の中で食べていただけるお菓子になっていけばと思っています。

マサホ議員 吉田氏子講社の集まりの時は、いつも八ッ橋がお茶菓子ででますよ。そして、ぼくは出張するときのお土産は、もちろん聖護院八ッ橋。
可奈子さんが立ち上げたお店「nikiniki」について聞かせてください。

鈴鹿さん 京都の若い方々が八ッ橋を普段のお菓子として口にされない、お土産用には購入するけれども自分では召し上がる機会が少ないと、学生の頃に気付きました。ただ、一度口にされると好きになっていただけるのです。
父に「何か新しい試みをしてみないか」と言われ、まずはそうした地元の方々が食べたくなる、八ッ橋に触れるきっかけとなるお菓子を作ろうと思いました。
それは結果的には、私自身が欲しいお菓子。自分の欲しいものを八ッ橋や生八ッ橋で表現して、八ッ橋の新しい美味しさを知っていただく場と考えています。
ただ、八ッ橋、生八ッ橋、そして八ッ橋の味の基本であるシナモンとまったく関係のないものは作らない。あくまでも八ッ橋への入り口ですから、これらに関するものを作らないと意味が ないですし、また、使っている八ッ橋や生八ッ橋は全て聖護院八ッ橋総本店と同じ配合と味、にっきも八ッ橋に使っているものです。
そうした八ッ橋とにっきに特化した専門ブランドが「nikiniki」なのです。

マサホ議員 今度僕も行ってみますね。お店はどこですか。

鈴鹿さん 四条の西木屋町と、八条口にあります。お店の設計から関わりました。
nikinikiの商品は本店含め、聖護院八ッ橋総本店では扱わず、二店舗のみで展開しています。

マサホ議員 京都の話をしていただきたいのですが、2019年に開催される「世界博物館大会」の開催地が京都に決定しました。誘致にいろいろご尽力いただきありがとうございました。誘致活動で何かエピソードなどありましたか。

鈴鹿さん パリで開催されたICOM(国際博物館会議)にて、京都への誘致スピーチをさせていただきました。このとき、祖母が結納の時に作ったと思われる振袖を着ました。美術館や博物館の館長さんたちの集まりということもあるでしょうが、海外の方に興味を持っていただき、また祖母のものということで感激されていました。スピーチの中でも、着物はもともと、一度反物に戻してサイズを変えて代々受け継げる作りになっている、これに代表されるように京都の文化というのは同じように、ただ鑑賞をしたりそのままの形に固執して残しているのではなく、生活の中に実際に混ざっていて、使われる形に柔軟に変わっていきながら続いているものだ、という話をさせていただきました。


マサホ議員
 御苦労様でした。世界大会が楽しみですね。
また環境問題に取り組む「DO YOU KYOTO?」ネットワークでも活動されていますが、お話いただけますか。

鈴鹿さん 平成21年に設立された団体で、京都の文化に関わっている若手から、文化を通じて環境の大切さを訴える目的で発足されました。
私もメンバーに入れていただき、お菓子を作る目線から皆様に環境の大切さを訴えています。
たとえばお能の方のお話では、「松風」「高砂」など松が出て来る演目が多くあるのですが、もし環境が壊れたら将来、「昔、松という木が日本にはあって…」と、そこから話をしなければならなくなり、うまく演目が伝わらない、と。
和菓子はお菓子で季節を表現するお菓子ですが、暑ければ涼しげな素材や色を使い、寒ければあたたかみのある造形にする、そうした感性も環境が悪化すれば失われてしまいます。
先ほどお話したように、文化を「生きた文化」として生活の中で続けていくためにも、環境を守り、季節を感じることができるのは大事だと思っていただけたらと、考えています。

マサホ議員 京都は、COP3が開催されて、京都議定書が採択された地です。環境問題は、大きな課題です。
ところで、可奈子さんとフェイスブックのお友達で、読ませてもらっています(笑)。
読んでいると、京都のいろいろな人達との出会いがあったり、旅行もされたり、カヤックもやっているのですね?冒険が好きなのですか?(笑)

鈴鹿さん 自然の中で体を動かすのが好きです。冬は必ずスキーに行きます。留学中はサーフィンもしました。この前はスカイダイビングもしました(笑)。
どんどんいろいろな事に挑戦したいという気持ちが強いですね。

マサホ議員 左京について一言お願いします。

鈴鹿さん 左京区のまちづくり委員をやらせていただいています。
実はまちづくり委員になるまで、左京区のことをあまり考えたことがなくて。
委員になり会議に出席して、左京区の北の方では鹿がでたとか猿がでたという話を聞くと、左京区ってこんなに広く自然が豊かで恵まれているのをあらためて感じます。

マサホ議員 岡崎、吉田、聖護院などこの界隈について一言ください。

鈴鹿さん 動物園も綺麗になって、ロームシアター京都も竣工して、岡崎も賑やかになってきましたね。昔はあのあたりで遊んでいましたし、まちが整備されると話題のレストランなども増えてきて、住んでいる者としては嬉しいですね。
夏祭りもありますね。「吉田東通 夜市」は地域の子供さんから年配の方までみなさん集まってこられて楽しそうです。いつからされているのですか?

マサホ議員 「タコとケンタロー」の小田研太郎君が発起人になって、僕も手伝っていますよ。今年で5回目です。今年も盆踊りもできて、大賑わいでした。10月は今宮社神幸祭があります。僕は剣鉾を年甲斐もなく差します。神輿の前を歩いて先導しながら、みなさんの安全を願う、幸せを招く、その為にも頑張りますよ。

 

鈴鹿さん 是非頑張ってください。私もお祭りってとても大切だと思っています。
京都はお祭の文化を大事にしていますよね。学校や職場でも地元でお祭りがあるといえば快く送り出してくれたり、最近はそういうところも減ってきたようですが、また活発になればお祭りを中心としたコミュニティが増えるのではないかと思います。地域の繋がりの為にもとても大切だと思います。

マサホ議員 最後に、僕は可奈子さんのお父さんと1歳違いです。可奈子さんとも親子みたいなものですが(笑)。
鈴木マサホについて一言いただけますか。

鈴鹿さん いつも思うのは、鈴木さんは地域の方とお話をする機会をたくさん持っていただいているということ。歩いていて出会えば手を振ってくださいますし、私にとっても身近な存在です。
みなさんと密接に、同じ目線で接してくださるので、すぐにぱっとお顔が思い浮かぶ。こういう方が地域の要となられるのだろうな、と思っています。
これからもよろしくお願いいたします。

マサホ議員 こちらこそ、これからもよろしくお願いします!今日はありがとうございました。

聖護院八ッ橋総本店
京都市左京区聖護院山王町六番地
(075)752-1234
(Official Website) http://www.shogoin.co.jp/
鈴鹿可奈子さんプロフィール
京都市生まれ。京都大学経済学部経済学科卒業、在学中カリフォルニア大学サンディエゴ校エクステンションにてPre-MBA取得。卒業後、信用調査会社勤務を経て、2006年聖護院八ッ橋総本店入社。「守るべきことを守ること、続けていくことが大事」という父・鈴鹿且久社長のもと、長い歴史と伝統の味を守り受けつぎながらも、新しい商品づくりに日々努めている。
2011 年には新しい形で八ッ橋を提供する新ブランド 「nikiniki(ニキニキ)」を立ち上げた。現在、専務取締役。